日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: S1-6
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シグナルトランスダクションを標的とした癌治療の新展開―基礎から臨床へ―
分子生物学的手法を用いた進行期子宮頸癌の放射線治療効果予測因子
*播磨 洋子
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抄録
遠隔転移に関与する遺伝子について包括的に検討するために、臨床検体を用いてマイクロアレイによる遺伝子発現プロファイルを観察した。同一の放射線治療を施行した子宮頸癌III-IVA期28例を対象とした。遠隔転移を認めなかった(遠隔転移(-))群は14例、多発性遠隔転移を認めた(遠隔転移(+))群は14例であった。初診時にインフォームドコンセントを行った後に採取した未治療の子宮頸癌組織からmRNAを抽出した。マイクロアレイ解析を行い69個の遺伝子が抽出された(感度78.8%、特異度38.1%)。遠隔転移(+)群の遺伝子群にゲノム不安定性に関与するTTK遺伝子が含まれていた。予後予測スコアは遠隔転移(+)群と遠隔転移(-) 群を識別した。
次に、予後に関与する最も重要な遺伝子を探索するためにReal-time PCR法を用いて解析した。放射線治療を施行した進行期子宮頸癌60例の初診時に採取した生検組織を用いた。検討した遺伝子はBAX、TEGT (BAX-inhibitor)、XRCC5、PLAU、HIF1A、CD44、TTKである。total RNAを抽出した後にcDNAを合成しReal-time PCR法で検討した。定量値は各ターゲット遺伝子のCt値からGAPDH遺伝子のCt値を引いた値の中央値をキャリブレーター値とし、Comparative Ct法による相対定量値で表した。予後良好群29例、不良群31例に分けて2群間における各遺伝子の相対定量値を比較した。さらに生死をエンドポイントに単変量、多変量解析を施行した。各遺伝子の単変量解析ではHIF1A (P=0.079)、TTK (P=0.092)が不良群に多く発現した。TTKは単変量解析(HR, 1.06; 95% CI, 1.0-1.12, p=0.044)、多変量解析(HR, 1.35; 95% CI, 1.02-1.78, p=0.035)ともに予後不良に有意に関与した。以上の結果からTTKは放射線治療後の予後不良に関与する重要な遺伝子の1つであると考えられた。
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© 2009 日本放射線影響学会
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