抄録
放射線被ばくの比較的高い線量による健康影響は明確であるが、Uptonが指摘したように低線量と高線量では放射線被ばくによる生物学的・細胞学的影響に質的な違いがあり(Upton, Cancer Invest 1989)、低線量被ばくによる健康影響には不明な点が多い。本シンポは、疫学研究を基に低線量放射線の外部被ばくによるがんリスク、特に固形がん(または白血病を除くがん)のリスクに関して考察を加える。低線量放射線の健康影響の評価で重要な役割を果たしうるのは、原爆被爆者の追跡調査、原子力作業者の追跡調査、自然放射線に曝露される住民の調査(インド、中国など)である。これまで、高自然放射線地域での調査はあまり注目されてこなかったが、インドでは日本との共同研究のほか、IAEA、IARC、フランス、アメリカなどの研究者が調査を開始しており、今後、重要な成果が得られるものと思われる。