抄録
1999年に発生したJCO臨界事故から10年が経過した。ここでは、原爆や核実験からJCO臨界事故までを含めた緊急時等の線量評価に環境放射能研究がどのように関与し、現在どのような展開を見せているのかについて、retrospective dosimetryを中心に議論する。Retrospective dosimetryは、被ばく時に計測しえなかった被ばく線量を事後に評価するための手法である。これはただ単に時間を遡ると言うだけでは無く、技術的進歩に伴って、これまで考えられなかった手法によって過去の試料の再評価が可能になると言う側面も含んでいる。JCO臨界事故時の線量評価は、臨床所見、生物的手法、放射化学的手法等を総動員した象徴的な出来事であった。今回はこれを振り返ることから始め、近年の加速器質量分析装置等の進歩によって、過去の事象に対してどのようなアプローチが可能になっているのかを検証したい。