日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: OA-3
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塩基損傷
8-オキソグアニン1分子のゲノム内における突然変異誘発能の解析系の確立;低線量電離放射線の暴露モデルとして
*安井 学本間 正充
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抄録
8-オキソグアニン(8-Oxo-Gua)は、電離放射線によって形成するDNA損傷の中で代表的なDNA付加体であり、遺伝子突然変異や老化に深く関与すると考えられている。本研究では、低線量暴露のモデルとして、1分子の8-Oxo-GuaをヒトTK6細胞のゲノム内に導入し、その突然変異誘発能を解析できる系を確立することを目的とする。まず、8-Oxo-Gua1分子を部位特異的に含ませたターゲティングベクター(6.1 kbp)を作製し、TSCER122細胞株(ヒトTK6細胞由来)のチミジンキナーゼ遺伝子のイントロン内に、ターゲティングによって8-Oxo-Guaを導入した。数回細胞分裂させた後、8-Oxo-Guaが導入された細胞だけをクローニングするために選択培地で2週間培養した。次に、各クローンのゲノムDNAを抽出し、8-Oxo-Gua損傷部位周辺をシーケンスした。その結果、Gua(コントロール)を導入した時は、22クローン細胞中すべてでGuaの対面に正常塩基のCytが塩基対形成していたが、8-Oxo-Guaを導入した時は、その対面に、15%の頻度でAde(5/33細胞)、3%の頻度でThy(1/33細胞)が検出された。本研究によって、ヒトTK6細胞のゲノム内におけるDNA付加体の突然変異誘発能を解析できる系を確立することができた。また、8-Oxo-Gua1分子はヒトゲノム内において突然変異を誘発させられることが明らかとなった。
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© 2009 日本放射線影響学会
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