日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: OA-15
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低線量・低線量率
チェルノブイリ放射能汚染シミュレーションにおけるマウス腫瘍形成性とゲノムストレス
*中島 裕夫本行 忠志斎藤 直藤堂 剛
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抄録
1986年のチェルノブイリ原発事故以来、低レベル放射能汚染地域に生活するヒトへの遺伝的影響が懸念されているが、ヒトにおいて影響が明らかになるまでにはかなりの時間経過が必要である。そこで、世代交代の速いマウスに着目し、実験室においてベラルーシ中等度汚染地(Babchin)の1997年、2005年放射能レベルのシミュレーションを行った。そして、低レベル放射能汚染環境下での長期内部、外部被曝マウスにおける腫瘍形成性とゲノムストレスへの影響を検討した。
RI施設内でA/J雄マウスが放射能汚染地マウスと同じ137Csレベルになるように137CsCl水溶液を経口的に8ヶ月間自由摂取させた(137Cs濃度を 0、10、100Bq/ml群の3群に設定)。
10、100Bq/ml群の各臓器における137Cs平衡濃度は、各群それぞれ肺では5.4、51.9、肝臓では4.8、43.2、そして、筋肉では14.9、165.5 Bq/gであった。
137CsCl水溶液給水開始から8ヶ月後にDNA二本鎖切断の指標となるγ-H2AXフォーカスの検出を各群のマウス肝細胞で試みた。その結果、0、10、100 Bq/ml各群の細胞あたりのフォーカス数は、それぞれ、1.4、9.5、10.7個と対照群に比して被曝群の方が有意に増加していることが認められた。このことは、チェルノブイリ低度汚染地域の動物においても、慢性的な遺伝子へのストレスが続いていることを示唆するものである。
しかし、同じマウスにおける小核試験の結果では、0、10、100 Bq/ml各群それぞれ6000細胞あたりの小核PCE数が68、63、70個と群間で有意な差は認められなかった。
また、解析途中であるが、0、10、100 Bq/ml各群6匹ずつにおけるウレタン誘発による個体あたりの肺腫瘍発生数は、それぞれ34.8 (209/6)、41.2 (247/6)、44.2 (265/6)、平均腫瘍直径(mm)は1.70、1.71、1.74である。(日本学術振興会科研費の支援による)
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© 2009 日本放射線影響学会
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