抄録
(目的) 放射線療法は、口腔がんの治療において重要な選択肢の一つである。放射線療法で問題となるのは、放射線に耐性を示すがん細胞の増殖抑制と、治療後の再発防止である。近年、腫瘍内では血管新生がさかんであることが明らかになってきたことから、血管新生阻害薬と放射線療法の併用療法についての研究が進められている。本研究では、新規血管新生阻害薬であるRAD001が放射線耐性細胞に有効であるのかをxenograft modelを用いて解析した。
(方法) ヒト口腔がん由来のSASと、その派生株であるSAS-Rを解析に用いた。SAS-Rは、標準的放射線療法である2Gy/dayのX線を照射し続けても増殖する臨床的放射線耐性細胞である。SASおよびSAS-Rをヌードマウスの背部皮下に移植してxenograft modelを作製した。腫瘍が一定の大きさに生着・増殖した時点から、RAD001の経口投与および2Gy/dayのX線を腫瘍部のみに部分照射した。また、in vitroにおいて血管新生因子であるVEGFの産生量をELISAで定量した。
(結果) 組織学的解析から、SAS-R由来の腫瘍は、SAS由来の腫瘍よりも血管新生の盛んなことが分かった。RAD001単独投与またはX線単独照射よりも、RAD001とX線の併用療法が顕著な抗腫瘍効果を示した。また、併用療法においてSAS-R由来の腫瘍はSAS由来の腫瘍と比較して、早期に腫瘍の体積減少が認められた。さらにSAS-RのVEGFの産生能はSASと比較して高いことがわかった。
(考察) 臨床的放射線耐性細胞では血管新生が盛んであることから、血管新生阻害薬とX線の併用療法が有効であることが示された。