日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: OB-18
会議情報

放射線応答・シグナル伝達
放射線による液性免疫と細胞性免疫影響に関する研究
*具 然和石田 寅夫竹内 由樹
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
研究目的:放射線による細胞性免疫低下は、知れているが、液性免疫の影響のメカニズムについては詳しく研究されていない。そこで、本研究では、放射線照射後の血球細胞及びIL-2, IL-6, IL-12の測定を行うことにより放射線による細胞性免疫、液性免疫への影響を検討することを目的とした。
研究方法:control群、0.5Gy群、1Gy群、2Gy群に分類した。血球数(白血球数、リンパ球数、単球数、顆粒球数)を照射前日から30日後に測定した。得られた血清より、Endogen Mouse IL-2 ELISA Kit、Endogen Mouse IL-6 ELISA Kit、Endogen Mouse Total IL-12 ELISA Kitを使用して測定を行った。
研究結果:リンパ球数において、0.5Gy照射群では、24時間後に有意な減少が認められた。1Gy照射群では、3時間後、24時間後、3日後に有意な減少が認められた。2Gy照射群では、すべての測定日において有意な減少が認められた。IL-2では、Control群では照射前日と比較して、照射15日後に24.6%であったのに対し、0.5Gy照射群では425.6%、1Gy照射群では57.9%、2Gy照射群では199.6%となった。また、照射30日後では、control群で96.6%であったのに対し、0.5Gy照射群では383.8%、1Gy照射群では158.7%、2Gy照射群では170.8%となった。IL-6では、0.5Gy照射群では、24時間後、3日後、7日後に有意な減少が認められた。1Gy照射群では、7日後、30日後に有意な減少が認められた。2Gy照射群では、24時間後に有意な減少が認められた。IL-12では、0.5Gy照射群では、30日後に有意な減少が認められた。2Gy照射群では、3日後、15日後、30日後に有意な減少が認められた。
結論:本研究により,放射線の影響によりリンパ球等の血球成分は早期に影響を受ける。IL-2は0.5Gyという低線量の放射線では、放射線ホルミシスにより産生が増強する傾向がある。IL-6は、放射線の影響により、産生量が低下する。しかし、0.5GyではIL-6の産生量は早期に上昇する傾向がある。4)IL-12は放射線により減少する傾向であるが、低線量放射線ではむしろ、産生量が増加する傾向がある。以上より、放射線を被ばくした早期では液性免疫が優位に働く傾向があり、時間とともに細胞性免疫が優位に働く傾向があることが認められた。
著者関連情報
© 2009 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top