日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: OB-20
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アポトーシス
UVB照射マウス皮膚表皮に見られる「変異誘発抑制」応答の機構解明
*池畑 広伸小野 哲也
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キーワード: 紫外線, 皮膚, 突然変異
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抄録
【背景】マウス皮膚にUVBを照射すると線量に依存して突然変異が誘発され変異頻度が上昇するが、表皮では一定の線量を超えると変異頻度の上昇が抑えられそれ以上あがらなくなる。真皮ではこのような現象は認められない。我々はこの表皮特異的な突然変異誘発の抑制応答を「変異誘発抑制」(mutation induction suppression, MIS)と名付け、その研究を進めてきた。MISは太陽光UVやUVAなどでも認められる。今回MISの発生機構の解明を目指し、MIS発動に十分なUVB線量を照射後、皮膚に誘発されるapoptosisを経時的に解析したので報告する。【方法】マウスの背部を剃毛し、UVBランプ(東芝FL20S.E)で1 kJ/m2を照射した。照射後経時的に皮膚サンプルを採取し、ホルマリン固定後パラフィン切片を作成した。HE染色により皮膚組織形態の変化を観察し、活性化カスパーゼ3特異的免疫染色によりapoptosis誘発動態を観察した。またゲノム傷害特異的apoptosisに関わるとされるp53の欠損マウスでもMIS誘発動態について解析を試みた。【結果】MIS発動UVB線量の照射により、既存表皮層で全体的apoptosisが発生し、角化亢進と相まって旧表皮層全体の排除が誘導された。同時に過形成(hyperplasia)が誘導され新生表皮層に交代することが明らかとなった。p53ホモ欠損マウスでもMIS応答が確認され、遅延は認められるものの同様に全体的apoptosisにより表皮更新が誘導された。【考察】UVB照射後のp53非依存的な全体的apoptosisと過形成の誘導による表皮層の更新という皮膚のゲノム防衛応答機構が明らかとなった。新生表皮層の角化細胞は既存表皮層より深い部位(毛包等)から移動・増殖してきたものと考えられ、これによりMIS現象も説明できる。
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© 2009 日本放射線影響学会
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