日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: OB-25
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修復遺伝子
Xpc欠損はmultiple mutationの増加につながる
*小野 哲也上原 芳彦池畑 広伸何 東偉陳 亜麗古谷 真衣子小林 彩香小村 潤一郎
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抄録
癌細胞ではDNA変異が多数見出されることから正常細胞が癌化するプロセスのどこかで突然変異が異常に増加する状況(mutator phenotype)が生じると考えられているが、その詳細についてはまだ分かっていない。他方、最近のいくつかの研究から1つのDNA分子上に複数の変異があるmultiple mutationが予測されるよりかなり高頻度で見出されることが分かり、mutator phenotypeの有力な証拠のひとつとして注目されると同時にその特性の解析が待たれている。我々はXpc遺伝子を不活化したマウスの老化に伴う突然変異の変化を解析する中で、multiple mutationの頻度が増加することを見出したので報告する。マウスはlacZを導入されたMutaマウスとXpc遺伝子をKOされたマウスを交配し、lacZとXpc欠損を同時にもつものを用いた。2ヶ月、12ヶ月、23ヶ月令でlacZ上での突然変異頻度を調べ、Xpc欠損の影響がみられる臓器について変異の質を解析し、そこで見出されるmultiple mutationについて分析した。その結果(1) multiple mutationの頻度はXpcの欠損した老化マウスで増加する、(2) その中でみられる突然変異のスペクトルはsingle mutationでのスペクトルとは異なる、(3) Xpc欠損老化マウスで見出された20個のmultiple mutationのうち2つでは短いDNAの中に4個の変異がみられる、などが分かった。これらのことはXPCが自然突然変異の加令に伴う蓄積を抑制することに働いていること、もしそれが働かないと損傷が蓄積し、そこでDNA複製が起こるとき損傷乗越え(TLS)DNAポリメラーゼが働いてmultiple mutationを引き起こすことを示唆しているように思える。因みにTLSポリメラーゼのいくつかはmultiple mutationを引き起こすことが示されている。
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© 2009 日本放射線影響学会
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