日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: OB-26
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修復遺伝子
DNA損傷応答におけるNBS1とKu70の相互作用
*田内 広田中 彩佐藤 惇阿部 紘子飯島 健太白市 浩二助川 恵大原 麻希小林 純也小松 賢志
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抄録
ナイミーヘン症候群(NBS)の原因タンパクNBS1は、DNA二重鎖切断(DSB)に応答したATMの活性化や細胞周期チェックポイント、相同組換え(HR)によるDSB修復に関与している。一方、Ku70タンパクは非相同末端結合(NHEJ)によるDSB修復の初期に中心的に関わる因子である。これら2つのタンパクは互いに相互作用しながら細胞のDSB応答が制御されていると考えられるが、その詳細は明かではない。我々は、NBS1がKu70のアセチル化を制御することでKu70-Bax複合体の解離を促進し、ATM-p53経路とは独立にDNA損傷によるアポトーシスを制御していることを見出した。今回、Nbs1とKu70の相互作用ならびにこれらが制御するHRとNHEJの生体機能をさらに解析するために、ニワトリDT40細胞を用いてNbs1およびKu70のダブルノックアウト細胞の樹立を目指してきた。これまでの実験でKu70-/-・Nbs1+/-/-細胞が非常に増殖が悪いことがわかっていたことからNbs1/Ku70ダブルノックアウト細胞は致死となることを予想し、Nbs1コンディショナルノックアウト細胞のKu70をノックアウトするというアプローチで実験を進め、最終的にCre組換え酵素による外来NBS1の除去によってダブルノックアウトをおこなった。その結果、驚いたことにNbs1/Ku70ダブルノックアウト細胞は、正常細胞やそれぞれのシングルノックアウト細胞と比較して顕著に増殖が遅いものの、生存可能であることがわかり、細胞の生存には、いわゆるクラシカルなNHEJとHR以外の経路が存在することが強く示唆された。現在、Nbs1/Ku70ダブルノックアウト細胞のDNA損傷剤感受性や染色体異常などの表現型解析をおこなっており、既に報告されているHRとNHEJの二重欠損であるKu70/Rad54ダブルノックアウト細胞との比較等について発表したい。
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© 2009 日本放射線影響学会
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