抄録
ショウジョウバエ三齢幼虫にX線を照射し、変態後の成虫において翅毛スポットテストを行い、体細胞突然変異の頻度を計測したところ、0.2Gy照射群では変異頻度が非照射群よりも低く、線量応答関係が下に凸であることが示唆された。またDNA修復の欠損系統では線量応答が直線となることがすでにわかっている。今回、アポトーシス機能を欠く個体での線量応答関係を調べるため、バキュロウイルスのp35遺伝子を導入して翅の後半部分でアポトーシスを抑制した。このような個体では翅の後半部分で変異頻度が増加した。特に染色体末端の欠失や不分離は大幅に増加したが体細胞組換の頻度はアポトーシス抑制の影響を受けなかった。また線量応答曲線はアポトーシスを抑制しても下に凸のままであり、この線量域での線量応答曲線の形状に対するアポトーシスの寄与はDNA修復に比較して大きくないことが示唆された。