抄録
我々は、リンK殻共鳴内殻電離を生じるエネルギーのX線では通常のX線に比べて致死効果が高いこと、およびほ乳類細胞に生じる染色体切断が、細胞内で修復されにくいことを示すデータを得たことを受け、DNA二重鎖切断修復欠損細胞を用いて致死効果を調べたところ、相同組換え修復欠損、非相同末端結合修復欠損ともに共鳴内殻電離による増感効果は野生株とほとんど差のない反応を示す結果を得て、第45回影響学会で報告した。共鳴内殻電離により修復されにくいDNA損傷ができるのであれば、もともと修復に欠損のある細胞では共鳴内殻電離が無い場合との致死効果の違いは正常細胞より小さくなるはずであり、実際に中性子線や重粒子線ではRBEが小さくなると報告されている。そこで昨年度報告した野生型L5178Y細胞でのリンK殻共鳴内殻電離により生じるDNA2重鎖切断に加え、今年度はDNA2重鎖切断修復欠損株M10の場合を報告する。DNA2重鎖切断の指標としてはγ-H2AXを用いた。
KEK物構研・放射光BL-27AポートにおいてリンK殻共鳴エネルギー(2.153 keV)およびその低エネルギー側(2.146 keV、共鳴吸収は無い)をM10細胞に照射し、30分間37°Cで培養した後のγ-H2AX量をフローサイトメトリーにて測定した。2.153 keVを照射した場合は、低2.146 keVの約1.3倍のγ-H2AXが存在した。これは致死効果における場合とほぼ同等の比率であり、野生型と同様の結果であった。