日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: OA-5-4
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A DNA損傷・修復
DNAポリメラーゼmuのDNA二本鎖切断部位への集積機構
*前澤 創安藤 祥子本山 拓郎国府田 宏輔小祝 修
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キーワード: DNAポリメラーゼ, NHEJ, pol μ
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抄録

ヒトには14種類のDNAポリメラーゼが存在し、アミノ酸配列の相同性に基づきA、B、X、Yの4ファミリーに分類される。Xファミリーは、DNAポリメラーゼβ(polβ)、DNAポリメラーゼλ(polλ)、DNAポリメラーゼμ(polμ)から構成される。XファミリーDNAポリメラーゼは、DNA修復反応時に、損傷し欠失したDNAを合成する。polβ及びpolλは、塩基除去修復に機能し、polλ及びpolμは、DNA二本鎖切断修復機構である非相同性末端結合(NHEJ)に機能すると考えられている。多くのDNA修復関連タンパク質は、DNA損傷時に損傷部位に集積する性質を示す。polβ及びpolλもまた、DNA損傷部位へ速やかに集積することが生細胞タイムラプス観察によって示されている。しかし、polμのDNA損傷部位への集積については、未だ生細胞を用いて観察されていない。我々は、polμのDNA損傷部位への集積機構を明らかにするために、パルスレーザーを用いて導入したDNA二本鎖切断部位へのpolμの集積をタイムラプス観察した。polμは、迅速にDNA損傷部位へ集積し、5分以内に損傷部位への集積が飽和した。polμは、polβが集積を示す、一本鎖DNA切断部位や塩基損傷部位への集積を示さなかったことから、DNA二本鎖切断部位へ特異的に集積していると考えられた。また、FRAP法及び光変換タンパク質を用いた解析によって、DNA損傷部位に集積したpolμと核質に存在するpolμは容易に入れ替わることが示された。さらに、polμ内のDNA損傷部位への集積に機能する領域を同定するために、polμの欠失変異体を用いてDNA損傷部位への集積を観察した。その結果、BRCTドメインを含むN末端領域、DNA結合領域であるHhHモチーフを含む領域、C末端領域のいずれも、DNA損傷部位へ集積することが示された。しかし、完全長polμに比べ、集積の遅延や集積量の減少が観察された。これらの結果は、polμのDNA損傷部位へ集積には少なくとも3つの領域が必要であることを示唆している。

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© 2010 日本放射線影響学会
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