日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: OA-5-5
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A DNA損傷・修復
DNA二重鎖切断によるLINE-1レトロトランスポジション誘導機構
*飯島 健太奥平  准之石坂 幸人
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キーワード: LINE-1, DNA二重鎖切断, ATM
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抄録

ヒトゲノム中には動き回りえる遺伝子(トランスポゾン)が約45%存在している。中でもLINE-1(Long interspersed nucleotide element-1)は全ゲノムの17%ほどを占めており、現在でも100コピー程度のLINE-1はレトロトランスポジション能を有している。LINE-1のゲノムへのランダムな挿入は直接的に遺伝子の変異をもたらすことに加えて、細胞内の遺伝子発現プロファイルを変化させることが報告されていることから、LINE-1と発がんとの関連が強く示唆されている。 近年の研究で、LINE-1のレトロトランスポジションが放射線などのDNA損傷により誘導されることが明らかにされており、この現象はDNA損傷応答において中心的な役割を果たすATMの活性に依存していることが示されている。 本研究ではLINE-1のレトロトランスポジションを測定できるレポーターの系とエンドヌクレアーゼによるDNA二重鎖切断(DSB)誘導系を組み合わせることにより、DSBが直接的にLINE-1レトロトランスポジションを誘導することを明らかにした。また、DSBにより誘導されるLINE-1の挿入個所の指向性に関して考察したい。 また現在ATMによるレトロトランスポジション制御機構についての解析を進めており、LINE-1タンパクがATMリン酸化タンパクと相互作用することが示唆された。放射線照射後に誘導される細胞形質変化・染色体不安定性とLINE-1のレトロトランスポジションとの関連性について議論したい。

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© 2010 日本放射線影響学会
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