日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: OA-6-3
会議情報

A DNA損傷・修復
DNA損傷修復タンパク質53BP1のアポトーシス誘導における働き
*橋本 優実松井 理橋本 光正岩淵 邦芳
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
<背景>
 p53結合タンパク質として同定された53BP1は、X線照射で生じるDNA二本鎖切断部位に集積し、DNA損傷に対する細胞周期チェックポイントや、DNA二本鎖切断の非相同末端再結合(NHEJ)修復に関与する。これまでに、NHEJタンパク質のいくつかについて、アポトーシス誘導時にユビキチン化などの修飾を受けたり、あるいはアポトーシスの進行に重要な役割を果たしたりしていることが報告されている。しかし、53BP1とアポトーシスの関連については全く不明である。そこで私たちは、アポトーシス誘導時における53BP1タンパク質の修飾について調べた。
<方法と結果>
 スタウロスポリンを処理したヒトT細胞由来株Jurkat細胞から細胞抽出液を調製し、53BP1C末端に対する抗体を用いてウエスタンブロッティングを行ったところ、アポトーシスの進行に伴い、full sizeの53BP1が減少し、約70 kDaの53BP1断片が出現した。この53BP1C末断片の出現は、カスパーゼ阻害剤z-VAD-fmkの存在下で抑制された。さらに、大きさから予想される53BP1の切断部位周辺に、カスパーゼ3に高親和性を示すアミノ酸配列を見出し、このC末断片は、53BP1の重要な機能ドメインであるTudor、BRCTの両者を含むことが予想された。カスパーゼ3による切断部位からC末端までの53BP1断片をHA融合タンパク質としてヒト子宮頚癌由来株HeLa細胞へ発現させ、抗HA抗体を用いてウエスタンブロッティングを行ったところ、検出されたタンパク質の大きさはスタウロスポリン処理で出現した約70 kDaタンパク質とほぼ一致した。さらに、スタウロスポリン処理Jurkat細胞抽出液を用いて、53BP1以外のNHEJタンパク質に対する抗体でウエスタンブロッティングを行ったところ、53BP1断片の出現に伴い、Ku 70/80およびXRCC4の減少、DNA-PKcsの増加が検出された。
<考察>
 以上より、アポトーシス誘導時に53BP1はカスパーゼ依存性に切断され、機能ドメインを含む53BP1C末端断片が出現するとわかった。この断片が、他のNHEJタンパク質と共にアポトーシスの制御に働く可能性も考えられる。
著者関連情報
© 2010 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top