日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: OB-1-6
会議情報

B 放射線応答・シグナル伝達
酸化ストレス応答におけるSTK38の役割
*榎本 敦宮川 清
著者情報
キーワード: STK38, 酸化ストレス, JNK
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

Serine-Threonine Kinase 38 (STK38)は、PKA, PKB,PKCなどが属するAGCファミリーキナーゼの1つである。酵母や線虫におけるSTK38ホモログは、細胞の形態や細胞分裂の制御因子として機能しているが、哺乳類における機能は未解明であった。近年、我々はSTK38がストレス応答型Mitogen-activated protein kinase (MAPK) シグナル経路の1つであるJNKカスケードを負に制御することを見出した。しかしながら、STK38の制御機構についてはほとんど未解明であり、これらについて解明を試みた。まず放射線、抗ガン剤、酸化ストレス、浸透圧ショックなどの様々なストレスに対するキナーゼ活性を調べた。その結果、放射線や過酸化水素などの酸化ストレスにより、STK38キナーゼ活性が上昇した。またSTK38のノックダウンは、酸化ストレスに対してJNKシグナルの亢進と細胞死の増強を誘発した。そして酸化ストレス誘発STK38活性化はWortmanninにより抑制された。そこで、PI-3K-AKT経路を構成する種々の因子について特異的阻害剤、遺伝子過剰発現・ノックダウンによるSTK38活性への影響およびin vitro での生化学的解析によりSTK38活性制御機構を解析した。その結果、我々は、AKTの基質であるGSK-3がSTK38をリン酸化することを突き止め,そのリン酸化部位を複数同定した。そしてそれらのリン酸化部位変異体のSTK38活性を解析し、これらのリン酸化部位が酸化ストレスによるSTK38活性化に重要な制御部位であることを明らかにした。さらにSTK38リン酸化部位特異的抗体を作製し、STK38活性と同定した部位のリン酸化状態に相関があることを見出した。本学会では、STK38制御機構とSTK38を標的とした増感のメカニズムについて発表する。

著者関連情報
© 2010 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top