日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: OB-1-5
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B 放射線応答・シグナル伝達
AKT阻害剤とCdk4阻害剤によるヒトがん細胞の放射線耐性の抑制
*志村 勉角田 智落合 靖史桑原 義和高井 良尋福本 学
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抄録

がんの三大療法の1つである放射線療法は、局所的な治療法であるために全身への負担が小さく、臓器の形態と機能温存性に優れているという利点を持っている。通常の放射線療法は、がんの治癒線量と正常組織への副作用を考慮して行うため、X線、1日2 Gyの繰り返しで、合計60 Gy程度のX線分割照射からなっている。放射線療法の最大の難問は、治療で根絶できない放射線耐性のがん細胞の存在であり、がんの再発の原因となる。このため、放射線療法を改良し、がんを根治するにはがん細胞の放射線耐性の克服が必要とされる。我々は2種類のヒトがん細胞HepG2(肝がん細胞株)とHeLa(子宮頸部がん細胞株)を用い、分割照射の放射線応答を解析した結果、がん細胞が分割照射により放射線耐性を獲得することを明らかにした。さらに、このがん細胞の獲得放射線耐性には、AKT/GSK3b経路によるCyclin D1の過剰発現が原因であることを明らかにした。 本研究ではAKT/GSK3b/ Cyclin D1経路を抑制し、がん細胞の放射線耐性の克服が可能かどうか検討した。AKT阻害剤およびCdk4阻害剤によって、この経路を抑制することで、放射線耐性細胞は放射線感受性になり、放射線耐性が消失した。阻害剤と放射線を併用させることで、放射線耐性細胞にアポトーシスを誘導することに成功した。 以上の結果より、AKT/GSK3b/Cyclin D1経路を抑制することで、がん細胞の放射線耐性の抑制は可能である。放射線と阻害剤の併用によって、がん細胞の放射線耐性を克服した放射線治療法の確立が期待される。

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© 2010 日本放射線影響学会
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