日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: PB-6
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B 放射線応答・シグナル伝達
放射線適応応答におけるPKCαの関与と活性化
*五月女 淑歩伊藤 勝幸中山 文田内 広立花 章
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抄録
予め細胞に低線量放射線を照射すると、その後の高線量放射線照射による致死作用や染色体異常、突然変異誘発に対して耐性となる現象が知られており、放射線適応応答と呼ばれている。低線量放射線の代わりに低濃度TPA処理によっても適応応答が確認されることから、プロテインキナーゼC(PKC)を介した細胞内情報伝達経路が関与していることが示唆されている。我々は、これまでにPKC阻害剤処理によって適応応答が見られなくなることや、低線量放射線照射によってPKCαの細胞内局在が変化することを明らかにしてきた。このことはPKCαが放射線適応応答に関与することを示唆するが、直接的に証明するものではない。我々は、RNAiによってPKCαをノックダウンして、このPKCαの関与を明らかにすることを試みた。PKCαsiRNAを導入した細胞から細胞抽出液を調整し、ウエスタンブロット法によりPKCαタンパク質量を解析したところ、siRNA処理した細胞でタンパク量が減少しており、PKCαのノックダウンを確認した。この細胞を1μMの過酸化水素で処理し、約5時間培養した後、5GyのX線を照射して微小核形成を指標に放射線適応応答反応を検討したところ、PKCαノックダウン細胞では適応応答が見られなかったことから、PKCαが適応応答に関与していることが明らかになった。そこで、過酸化水素処理した細胞について、リン酸化PKCαに対する抗体を用いてウエスタンブロット法によりPKCαの活性化を検討したところ、過酸化水素処理により活性が上昇する傾向が見られた。このPKCαの活性化が、放射線適応応答に密接に関与しているものと考えられる。
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© 2010 日本放射線影響学会
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