抄録
[研究目的] 水溶性ビタミンE配糖体であるTMG(2-(α-D-Glucopyranosyl)Methyl-2,5,7,8-Teramethylchorman-6-OL)は放射線防護効果があることが報告されているが、明確に動物を用いた血球細胞についてのデータを発表している文献は少ない。そこで、本研究ではマウスにおいて、放射線照射後の血球細胞への影響に対するTMGの放射線防護効果について検討することを目的とした。
[方法] ICR雄マウスを、Control群、Sham Control群、X線単独照射群、TMG+X線照射群、X線照射+TMG群に分類して以下の実験を行った。TMGは600mg/kgを腹腔内投与した。また、X線照射は、マウスの全身に2Gy照射した。照射前日から30日後にかけて採血を行い、得られた血液を用いて血球数(赤血球、白血球、リンパ球、単球、顆粒球、血小板)の測定を行った。
[結果] TMGの投与により白血球数(リンパ球数、単球数)のX線照射後の回復が、単独照射群よりも早かった。さらに、TMG投与群は、Control群に比べて変化が緩やかであった。
[考察] TMGは放射線による致死効果を防ぐ効果があり、フリーラジカル除去作用による作用、つまり、抗酸化作用による放射線防護効果と考えられる。また、TMGにおけるグルコースの存在がより高い放射線防護効果を示しており、放射線による造血組織の損傷を防護する作用があると考えられる。TMGは血液細胞の急激な変化を防ぎ、免疫低下を妨げる作用があると考えられる。
[結論] 本研究により、TMGのマウスに対する放射線防護効果を認めた。TMGは放射線照射に対しての効果と体内における作用が水溶性ビタミンE であるため、代謝も早くより安全に使える放射線防護剤として期待される。