抄録
「背景」:トコフェロールモノグリコシド(TMG)は水溶性で優れた生体防御能を有するが、その合成法は極めて高価である。
[目的]:本報告では、安価な水溶性ビタミンE誘導体の合成法を開発し、その放射線防護活性について述べる。
「試料」:テトラメチルクロマノールカルボン酸(TMCC、市販名:トロロックス)、無機アルカリ、アルコールなどが用いられた。
実験1(合成1):TMCC(2.5g)に1規定の水酸化ナトリウム水溶液(40ミリグラム)を加えてTMCC塩(2.6グラム)をつくった。
実験2(合成2):TMCCに等量のグリセリンなどのアルコールを加えて650℃・40分間加熱してTMCCのグリセリンエステルを作成した。
実験結果1(水溶性)
水に対する溶解度(_%_) 比
TMCC 0.02 1.00
TMCC-Na 0.13 6.5
TMCC-GE 0.63 31.5
実験2(放射線防護活性):放射線(25Gy)照射によるプラスミドDNAの損傷(主鎖切断による解環度をComet 試験法によって測定)に及ぼす1ミリモルのTMCC-NaやTMCCグリセロールエステル(TMCC-GE)の防護活性を調べた。
放射線(Gy) TMCC誘導体 DNA損傷率(_%_) DNA損傷防御率(_%_)
25 なし 54 46
25 TMCC-Na 18 67
25 TMCC-GE 5 91
結論: プラスミドDNAの放射線損傷はTMCC-NaやTMCC-GEによって防護され、TMCC-Gの防護活性は最も高かった。