日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: S5-3
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シンポジウム5 DNA損傷応答と疾患
脱ユビキチン化酵素OTUB1によるDNA損傷依存性クロマチンユビキチン化の制御
*中田 慎一郎
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抄録
DNA二本鎖損傷は,ゲノム安定性の維持に危険をおよぼす因子である.DNA二本鎖損傷が起こると,ATM依存性のリン酸化およびE2ユビキチン結合酵素UBC13-E3ユビキチンリガーゼRNF8/RNF168によるユビキチン化によりDNA損傷周辺のクロマチンが修飾される.これらの修飾は,ゲノム安定性に重要である.最近,我々は,クロマチンユビキチン化の抑制因子としてOTUB1を発見した.OTUB1は,OUTファミリーに属する脱ユビキチン化酵素であるが,脱ユビキチン化酵素活性に依存せずに,RNF168によるクロマチンのユビキチン化を抑制する.その機構はUBC13との結合によるユビキチン鎖の形成抑制である.OTUB1の過剰発現では,DNA損傷時のhomologous recombinationの割合が低下するのに対し,ATMを薬理学的に阻害した細胞では,OTUB1のノックダウンにより,低下したhomologous recombinationをレスキューすることができる.これらのことから,OTUB1はDNA損傷応答の制御において重要な役割を担う分子であると考えられる.
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© 2010 日本放射線影響学会
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