日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: S6-1
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シンポジウム6 広島“黒い雨”地域におけるローカル・フォールアウトの実態解明
広島の“黒い雨”地域のフォールアウト研究の歴史と目的
*星 正治
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抄録
 黒い雨については、放射能を含んだ雨の降った地域の測定による確認の努力が続けられてきた。私たちのグループでも特に広島の場合を中心に1980年から開始した。しかしながらその間決定的な証拠は見いだせていない。問題は土壌汚染などではその後の核実験のフォールアウトが10倍以上もあり広島原爆だけの影響が見えなかったことである。最近になってセミパラチンスクでの研究が応用できることが分かってきたことや、古い民家で被爆直後に建てられた家の床下の土壌のサンプリングが可能となってこれらからの研究の成果に期待している。  黒い雨の地域については比較的近距離の直ばくを含む地域を(1)3km圏と言っている、(2)通常言われるのはそれより以遠で30kmくらいまでの範囲で宇田雨域とか増田雨域といわれる地域である。また(3)それ以遠も考えられ30km以遠の地域と言うことにしているが、この地域の研究はほとんど無い。最近の私たちを含む広島市役所の聞き取り調査で新たな大瀧雨域が出来た。これは上記(2)の30km圏であり、それまでの雨域より広がっている。今回の研究では(2)の30km圏を主な目的とする。土壌や計算による方法で当時の黒い雨地帯の住民の被ばく線量の推定を最終的な目的としている。放射線による影響研究では被ばく線量の評価の後に疫学調査と合わせ放射線のリスクを求めることが原爆被ばく者の場合やセミパラチンスク近郊住民の調査でも最終目的とされる。しかしながら、広島原爆などでは健康影響調査として系統的なものがなかったことにより、被ばく線量推定によりその後の影響を推定することになる。
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