抄録
広島原爆の黒い雨にともなうローカル・フォールアウト汚染については、爆心地西方約3kmの己斐・高須地区の汚染はよく知られているが、山間部など己斐・高須以外に降った黒い雨にともなう放射能汚染については、原爆直後の放射線サーベイが不十分であったことや核実験にともなうグローバル・フォールアウト汚染との重複などにより、その実態が未だに明らかでない。本シンポジウムではまず、長崎の黒い雨を含めた従来の研究経過、黒い雨体験者アンケートの解析、TIMSやAMSといった最新の質量分析法によるウラン同位体の測定、原爆後かつグローバル・フォールアウト汚染以前に建てられた家屋の床下土壌放射能測定について報告を受ける。さらに、新たな知見に基づく外部被曝量評価や黒い雨に関する気象シミュレーションの可能性についての報告を受け、黒い雨にともなうローカル・フォールアウトの実態解明に向けて総合的な議論を行う。