抄録
トリチウムは天然放射性核種の一つである。1960年代に行われた核実験に由来するトリチウムの影響は、地下水や深層海水には残っているが雨にはもはや見られない。核エネルギー利用に伴うトリチウム放出はローカルなソースとして、海水や大気のトリチウムレベルに観測されている。核融合施設では極めて大量のトリチウムを使用することから、環境影響の評価は重要となる。従って、核実験、天然および原子力施設からの放出トリチウムの環境挙動の知見とそれらを基礎にした環境移行モデルが求められる。トリチウムの環境中での多様な存在形態と移行過程を理解するために、さまざまな環境試料の分析が必要であり、測定手法の確立と環境データの蓄積が行われてきた。ここでは我が国の環境トリチウムの現状について概説し、環境中でのトリチウム移行について述べる。