抄録
総線量が同じであっても線量率によって生物影響が変化する現象として、線量率が低いほど生物効果が小さくなる「線量率効果」と、主に粒子線で知られる「逆線量率効果」がある。これらは、放射線影響の特徴的現象として古くから知られているが、その作用機序については、いまだに解明されていない点も多い。その一因として、低線量率放射線による生物作用の解明に必要となる、鋭敏な解析手法や照射技術が十分確立されていなかった点があげられる。近年、様々な高感度検出手法や遺伝子改変材料、照射設備等が開発され、それらを組み合わせて用いることにより、高線量率放射線照射の場合とは本質的に異なる、低線量率放射線に特徴的な生物応答とその機構が明らかになりつつある。本ワークショップでは、5名の演者が、最新の研究成果を紹介するとともに、放射線リスク評価やがん治療などの社会的ニーズにこたえるための研究の将来性についても議論したい。