抄録
ヒトが長期間滞在する宇宙空間は宇宙放射線と微小重力環境の二つが特徴的である。宇宙は人体に大きな影響を与える高エネルギー粒子線が含まれる低線量率・低線量の放射線環境である。宇宙放射線はDNA損傷、突然変異、染色体異常、奇形や白内障などを引き起こすことが知られている。ヒトが長期にわたって宇宙に滞在するためには、放射線のリスクを正しく評価することが不可欠である。今後の宇宙利用発展に向けた基盤的有人技術開発への貢献や新しい科学的知見の獲得を目指し、2008-2010年実施の国際宇宙ステーションISSの「きぼう」を利用した宇宙放射線研究プロジェクト(LOH、Rad Gene、Rad Silk、Neuro Rad)の狙いと成果について紹介したい。