日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: X1-1
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日本晩発効果研究会セミナー「動物照射実験アーカイブの放射線リスク研究等への活用」
長期動物実験アーカイブ構築の動向
*三枝 新田中 公夫
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抄録

長期動物実験研究の役割は、従来より放射線影響・リスク研究において重要な役割を担って来たと共に、今日では非がん疾患の研究分野においてもその重要性が認識されてきている。しかしながら、今日では大規模な長期動物実験を実施することは困難になってきているほか、過去の照射試料やデータについても、廃棄されるケースが少なくなくなってきた。 このような状況を受けて、米国DOEとEUでは 1990年代の半ばから独自に長期動物実験データベースの構築を開始した。1990年代後半には両者の合体が計画されるとともにわが国もプロジェクトに参加し,ここに国際データベースの構築が開始され、最終的に欧米日において1960~1998年に実施された実験情報とデータが共通したフォーマットと診断基準でデータベース化され、2004年に研究者に公開された。2006年には、本データベースの重要性が認められ「ERA-PRO」プロジェクトとしてEUの第6次枠組み計画(FP6)に採用され、EURATOMから3年間の研究補助金を得て、データベースシステムの改良とデータフォーマットの改良が進められた。8ヶ国11機関が参加した本プロジェクトは、多数の研究機関によって実施され特定分野の研究活動を統合する共同プロジェクトである”Network of Excellence”に採択された。さらに引き続き、「ERA-PRO」に登録された研究のサンプルアーカイブの構築・併設を目的とした「STORE」プロジェクトがEUのFR7(2009~2012年)に採用され、現在、サンプルアーカイブ構築の他、長期保管包埋試料の解析技術の検討などを、ロシアを含むEU6ヶ国9つの研究機関が行い、日本・米国を含む助言委員会がその活動をサポートしている。 わが国においては今日まで研究者レベルのネットワークであるJRAを通じてこれらの国際データベース構築に協力している。サンプルアーカイブ構築に関しては、今後も研究機関が個別にデータ・サンプルを管理する状況は続くと考えられる。その中で提供可能なデータについては共通フォーマットでネットワーク化し、欧米のネットワークに登録して行くことが期待されている。

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© 2010 日本放射線影響学会
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