日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: OF-1-3
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F: 被ばく影響・疫学
広島市内土壌の放射化分析と原爆誘導放射線量評価
*田口 優太遠藤 暁今中 哲二福谷 哲エフゲニア グラノフスカヤ星 正治静間 清
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抄録
広島・長崎の原爆線量評価システムDS86・DS02において、放射化土壌による被曝線量推定に必要な土壌元素濃度がまとめられている。しかしながら、広島と長崎各2ヵ所のみの測定であった。また、それ以前の1969年に橋詰らによって広島土壌で16か所のMn、Na濃度の分析が行われているが、土壌中Sc濃度については1か所のみの報告である。Scは、原爆中性子により46Scへ放射化される。半減期は84日と長く、1~数カ月の空間線量に大きく寄与するため、放射化物による被曝線量推定では重要である。  本研究では、広島市内土壌中のScの元素濃度を放射化分析法で測定し、そのばらつきを確かめるとともに、得られた元素濃度を用いて、広島市内土壌放射化による原爆誘導放射線量の評価を行う。  広島市内の原爆爆心4km以内で11か所の土壌試料を採取した。採取した試料は2mmメッシュの篩にかけ、120℃で15時間乾燥したのち、京都大学原子炉実験所(KUR)で熱中性子照射を行い、放射化法により、元素濃度を決定した。  放射化分析の結果、Al、Mn、Na、Scを含む23元素の濃度を決定した。各元素濃度は、概ねDS86 の値と矛盾がなかった。Scについては、濃度とそのバラツキの決定し、広島市内土壌の平均濃度とばらつきは5.12±0.59(ppm)で、誤差12%と見積もられた。  放射化分析で得られた元素濃度を利用し、原爆炸裂後の空間線量時間依存性の評価を行った。放射化土壌による空間線量は、爆発直後数分にかけて28Alが占め、その後、数日にかけて24Naが主要成分となり、10日~数カ月にかけて46Scが支配的となることが確認された。今回得られた空間線量の評価値は、原爆爆発およそ1カ月後の実測データおよび今中の評価値(Radiat Environ Biophys 2008)とほぼ一致した。
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© 2011 日本放射線影響学会
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