抄録
福島第1原発における事故に伴い、原発から北西方向約40km に位置する飯舘村において、高い放射能汚染が生じた。この地域には住民が居住中であることを考慮し、汚染の概略を把握するため、2011/3/28-29、飯舘村当局の協力を得て放射線サーベイ活動を行った。
飯舘村役場のワゴン車に放射線測定器(ALOKA PDR-101、ICS-313)を持ち込み、村道を走行しながら、車内での放射線量率を測定した。北部:92 点、南部:38 点、計130 点で放射線量を測定した。数カ所では、車内と車外での測定を実施しワゴン車の遮蔽効果を確認した。測定値をもとに空間線量率マップを作成した。また、核種分析用の土壌を5カ所で採取し、広島大学においてGe 半導体検出器を用いてγ線核種分析を行った。土壌の核種分析の結果、129m,129Te、131,132I、134,136,137Cs、140La が同定された。同定核種の汚染密度、半減期および線量率変換係数(地表1m)を用いて、線量率の時間変化を求めた。得られた空間線量推定値は、モニタリングポストによる実測値と矛盾が無く、本評価法の有効性が確認された。時間変化を考慮した3/15沈着後から3月間の積算線量は、曲田で74mSv、村役場で22mSvと極めて高い値が得られた。生活の環境による遮蔽を考慮すれば、おおよそ半分程度と考えられる。このデータをもとに、飯舘村における年間の積算被曝線量マップを作成し、文部科学省が作成したマップとの比較を行った。その結果、大まかには、2つのマップに同様の傾向が確認された。我々が作成したマップでは、より詳細な情報が得られ、今後の調査や帰村の参考になると考える。