抄録
東日本第震災(平成23年3月11日)に引き続いて発生した東京電力福島第一原発事故により東北、関東では深刻な放射能汚染が拡がった。我々は3月20日より広島大学東広島キャンパス内で大気中放射能の測定を開始した。サンプリングにはハイボリュームエアサンプラー(SHIBATA HVA- 500N )を使用し、グラスファイバーフィルター(TOYO GB100R)を使用し、日中8時間捕集した。捕集後のフィルターは短時間ラドン子孫核種(214Pb, 214Bi)の減衰を待って4時間後から開始した。測定には低バックグラウンドGe検出器(EG&GORTEC GWL-120230-)を使用し、測定時間は12時間とした。この検出器は宇宙線バックグラウンドの低減のためにアンチコインシデンスシステムを使用し、また、室内空気中のラドン子孫核種のバックグラウンドを低減するために検出器周囲に窒素ガスを循環させている。測定の結果、3月30日より、131Iが検出され、その後、134Cs, 137Cs, 132Teが検出された。4月7日に放射能濃度は最大ピークを示し、その後、4月18日に再び増加が見られたが、その後は減少し、4月末以降は検出されていない。
観測された大気中濃度の最大値は131Iで0.0066Bq/m3 (ただしチャコールフィルターは使用していない)、137Cs: 0.0078 Bq/m3 , 134Cs: 0.0068 Bq/m3, 132Te: 0.00011 Bq/m3 であった。許容濃度との比は数千から数万分の1であり、ごく微量であった。雨水からは4月8日に131Iが0.044Bq/l 観測されたのみでそれ以外には観測されなかった。今回検出された核種とチェルノブイリ原子炉事故時に大気中から観測された核種についての比較についても示す。