抄録
【はじめに】近年、劣化ウラン弾汚染や原発事故を背景に、ウランの毒性影響に関心がもたれている。これまで我々は、標的臓器である腎臓のウランの挙動を調べ、ウランが近位直尿細管に選択的に蓄積し、組織損傷を引き起こしていることを示してきた。本研究では、微小ビームを用いたウラン局在量解析により、毒性発現および尿細管再生期における尿細管におけるウラン局在およびその局所量を検討した。
【実験】動物の処置:Wistar系雄性ラット(10週齢)に酢酸ウラン(天然型)を背部皮下に一回投与(0.5 mg/kg)した。ウランの分析:腎臓中ウラン濃度は誘導結合プラズマ質量分析により測定した。腎臓内ウラン分布および局所量の解析は高エネルギー領域シンクロトロン放射光蛍光X線分析(SR-XRF)により調べた。近位直尿細管の検出:SR-XRF測定試料の隣接切片について近位直尿細管に特異的に存在するグルタミンシンターゼの免疫染色を行った。アポトーティック細胞の検出: TUNELおよびヘマトキシリン染色した。
【結果】投与1日目ウランは皮質内部に分布した。この領域のウラン分布は近位直尿細管分布と対応しており、尿細管上皮には腎臓平均ウラン濃度の50倍程度のウラン濃集部位が認められた。投与8日目では近位直尿細管上皮の脱落が観察されたが、15日目になるとダメージ部位には再生尿細管が認められた。15日目の腎臓平均ウラン濃度は1日目の12%に減衰しウラン濃集部位は減少したが、1日目と同等のウラン局所量の部位も検出された。