抄録
近年、放射線がヒト以外の生物に与える影響が注目されてきており、ICRPではPublication 108でリファレンス動植物を用いたヒト以外の生物への吸収線量の推定方法が提案されている。一方、原発事故などの放射性核種放出による汚染において、広範囲に空間線量率が計測されており、空間線量率を用いてヒト以外の生物影響を評価する動きがある。しかし、空間線量率は、空気吸収線量もしくは1cm線量当量であり、そのままではヒト以外の生物影響データと比較できない。そこで本研究では、空間線量率から生物吸収線量に変換する換算係数をICRPリファレンス動植物の陸生生物について導出した。
セシウムのみの汚染状況で比較すると、沈着初期では、空間線量率を用いた評価では1桁から2桁程度の過小評価になり、年月が経過し土壌に浸透した状態では空間線量率と比較してリファレンスシカで5倍弱の過小評価になり、土壌上で生息する動物についてはほぼ等しくなることがわかった。また、短半減期の核種が空間線量率に影響している状況についても、検討を行い結果を報告する。