日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: PE-4
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E: 放射線治療・修飾
抗酸化物質エダラボンによるDNA損傷前駆体の化学回復
*端 邦樹漆原 あゆみ山下 真一鹿園 直哉横谷 明徳室屋 裕佐勝村 庸介
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抄録
放射線によるDNA損傷の形成は、放射線が直接あるいはOHラジカルを介してDNAに作用することによって生じるDNAラジカルの発生に端を発する。生体内でのOHラジカルの寿命が数ナノ秒であるのに対し(Roots, 1972)、DNAラジカルには数秒というオーダーの寿命を持つものもあることから(Hildebrand, 1997)、抗酸化物質などの化合物がDNAラジカルを後追いで修繕する作用である「化学回復」は化合物の濃度が低い場合にも有効に機能しうる作用であると考えられる。この抗酸化物質による化学回復はこれまでdGMPラジカルの還元反応の測定などから一部の化学者によって推定されており (O'Neill, 1983など)、生体内では重要な放射線防護メカニズムの1つと考えられている。本研究で用いたエダラボンは脳梗塞治療用の薬剤として臨床利用されている抗酸化物質であり、マウスを使ったin vivoの照射実験により放射線防護効果を示すことも実証されている(Anzai, 2004)。我々は、エダラボンの放射線防護効果の起源としてOHラジカル捕捉に加え、DNAラジカルに対する化学回復もあるのではないかと考え、エダラボンの化学回復作用の有無を調べた。
まず電子線照射により生じたヌクレオチド(dGMP)ラジカルをエダラボンが還元することをパルスラジオリシス法により示した。さらに実際のDNA分子にエダラボンによる化学回復が機能するか否かを調べるため、プラスミドDNA溶液試料に対するガンマ線照射を行った。照射により生じた鎖切断に加えAPサイト及び塩基損傷収率を、塩基除去修復酵素をプローブとして用いることで定量した。その結果、鎖切断に比べてAPサイトや塩基損傷がエダラボン添加により大きく抑制された。この結果は、これらのDNA損傷の前駆体であるDNAラジカルをエダラボンが化学回復すること示唆している。
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© 2011 日本放射線影響学会
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