日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: W3-5
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ワークショップ3. 放射線生物学と活性酸素(酸化ストレス)―ミトコンドリアの役割―
放射線発がんにおけるミトコンドリア機能撹乱の関与
*渡邉 正己菓子野 元郎熊谷 純渡邉 喜美子田野 恵三
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抄録

現在、放射線発がんは、「DNA損傷→染色体異常および突然変異→細胞がん化」の経路をとると考えられている。しかし、我々のこれまでの結果は、DNA損傷を起源とする経路以外にDNA損傷を起源としない経路が存在し、その経路が圧倒的に主経路であることを強く示唆している。そこで、今回、我々は、ヒト、マウスおよびハムスター由来の初代培養細胞を用いて、放射線被ばく後、染色体異常、基質非依存性増殖能、無限増殖能などがん形質の発現と細胞内生理活性変化の関連を調べた。その結果、低線量放射線被ばく時には、一時的にミトコンドリア機能撹乱が起こり電子伝達系から大量の電子が漏洩し、テロメア、サブテロメアおよび中心体など重要分子の構造異常が観察されることが判った。放射線被ばく後、遅延的にがん化した細胞では、細胞の由来動物種に関わらず染色体異数化が共通して観察されるので中心体の構造異常に伴う染色体分配異常誘導が低線量被ばく時の細胞がん化の主たる経路であると予想される。この経路は、基本的に自然発がん経路と区別できず、低線量放射線の発がんの大半は自然発がんの嵩上げであると考えられる。 *この研究は文部科学省科学研究費 (21310036) および内閣府原子力安全研究補助金によっておこなった。

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© 2011 日本放射線影響学会
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