抄録
放射線治療抵抗性をもつがん細胞が固形腫瘍内の何処に局在し、如何にしてがんの再発を引き起こすのかという問題は、がんの放射線治療における最大の問題である。我々はCre-loxPシステムとHIF-1依存的プロモーターを組み合わせることで、ピモニダゾール陽性の低酸素がん細胞とHIF-1陽性がん細胞をそれぞれ光標識する技術を確立し、がん再発への寄与を解析した。その結果、壊死領域に接して存在するピモニダゾール陽性かつHIF-1陰性細胞群が放射線を有意に生き残り、がんの再発を引き起こすことを直接的にイメージングすることに成功した。また当該細胞群ががんの再発を引き起こす過程でHIF-1活性を獲得し、腫瘍血管に向かって遊走することを見出した。さらに、このHIF-1依存的な遊走を抑制した場合に、放射線治療後のがんの再発を有意に抑制できることを確認した。がんの再発における放射線科学的な酸素効果の役割と、放射線生物学的な放射線抵抗性機構の時空間関係について、演者らの最新の知見を紹介する。