日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: W10-4
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ワークショップ10. 低酸素バイオロジー研究に基づく放射線生物学・放射線腫瘍学の新展開
局所腫瘍内低酸素領域の修飾が及ぼす遠隔肺転移能への影響-局所腫瘍制御と遠隔転移能抑制の同時達成に向けて
*増永 慎一郎松本 孔貴平山 亮一櫻井 良憲田中 浩基鈴木 実近藤 夏子木梨 友子丸橋 晃小野 公二
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抄録
【目的】 固形腫瘍内の酸素化状態の操作処置によるBNCTを含む治療後の肺転移への影響を休止期(Q)腫瘍細胞の感受性をも加味して分析する。 【方法】 B16-BL6腫瘍を下肢に移植したC57BL/6マウスにBrdUを連続的に投与し、固形腫瘍内の増殖期(P)腫瘍細胞を標識後、急性低酸素細胞分画(HF)を解除するニコチンアミド(NA)を担腫瘍マウスに腹腔内投与または、慢性HFを解除するとされる低温度温熱処置(MTH)を腫瘍へ施行し、その後ガンマ線照射又はBSHもしくはBPAを用いたBNCTを施行した。照射直後に、腫瘍を切離細切し単腫瘍細胞浮遊液を得、サトカラシン-Bと共に培養後、BrdUへの免疫蛍光染色法によって、照射時にQ細胞であった腫瘍細胞の小核出現頻度(MNfr.)を得た。腫瘍内の全腫瘍(P+Q)細胞のMNfr.は、BrdU非標識腫瘍から得た。他方、照射後17日後に肺転移結節数も計測した。 【結果】 (P+Q)細胞の感受性はMTHよりもNAの併用によって、Q細胞の感受性はNAよりもMTHの併用によって、より効率的に高められた。BPA-BNCTは(P+Q)細胞の、BSH-BNCTはQ細胞の感受性をより増強した。無照射腫瘍では、NA投与が肺転移結節数を減少させ、腫瘍への治療後には、NA投与併用もMTH処置併用も照射後の肺転移結節数を減少したが、特にNA投与併用が肺転移数を顕著に減少した。 【結論】 腫瘍内の酸素状態の操作処置は肺転移に影響する潜在力を有し、中でも急性HFを解除するNA投与は肺転移数を減少するためには有望と考えられる。MTH併用BSH-BNCTは局所腫瘍制御を高めるのに対し、NA併用BPA-BNCTには遠隔肺転移を抑える潜在力があるのかも知れない。
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© 2011 日本放射線影響学会
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