農村経済研究
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論文
農業委員活動記録からみる新潟県の農業委員の業務の実態
-活動の「見える化」の取り組みと新体制移行への課題-
堀 正和堀部 篤伊藤 亮司
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2017 年 35 巻 1 号 p. 110-117

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抄録

2016年4月に施行された改正農業委員会法では,農業委員の定数が約半数に削減され,委員の選出方法が変更されるとともに,必須業務として新たに農地利用の最適化の推進が位置付けられた.しかし,従来から農業委員会の日常的な活動やその成果が見えにくいことが指摘されている.この点について農業委員会系統として,活動記録簿や活動整理カードを整理して公表することで活動の「見える化」を進めてきた.そこで本稿ではこれらを分析し,農業委員の活動実態とその成果を明らかにすることで,新体制移行への課題を検討した.具体的には,農地相談等の各農業委員の日常的活動を記録した「農業委員活動記録簿」データを元に,農業委員の業務の実態を明らかにした.分析対象とした新潟県は,全国でも珍しく,上記の記録簿について,2010年より独自集計を行っており,これを活用した.分析の結果,総会・農地部会等への出席以外の活動件数は,農地関係は全体のほぼ半数に当たり,この活動件数は委員数と相関関係が強かった.また,担い手関係やその他の活動を進めるには,ある程度の農業委員数を確保しなければ,十分な活動を進めることが難しいことがわかった.続いて,農業委員会組織としての活動成果は,農業委員会活動整理カードとしてWeb上で公表されている.農業委員活動記録簿による活動実態と,この農業委員会活動整理カードからみる組織としての活動成果との関係を考察した.その結果,2009年の農地法の改正により関連業務が増大したが,その中でも主な業務として追加された遊休農地対策について,農業委員の日常的な活動により,成果を上げている地域も多く見ることができた.これらを踏まえ,体制移行期において,農業委員と農地利用最適化推進委員を合わせた委員の定数の確保が重要であることを指摘した.

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© 2017 東北農業経済学会
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