2017 年 35 巻 1 号 p. 101-109
農地の情報管理については,農業委員会の農地台帳が法定化され,全国農地ナピのシステムにより一般に公開されることとなり,新たなステージを踏み出したといえる.しかしながら,システムはスタートしたばかりであり,全体の公開情報の制度の向上を図り,農業委員会の活動と併せ,耕作者の貸し付け意向や遊休と措置の実施状況等の各項目を実態に合わせて把握し,システムに反映させるための作業は始まったばかりである.本稿では,システム整備に向けての実務上の課題として,今後,一筆ごとの農地管理を行う上で各種農地面積関連の諸統計のズレを調整せねばならない状況を念頭に,①農業委員会の農地台帳整備についての現段階における実態,②農地台帳の基となる固定資産税台帳面積と農林水産省の耕地面積の年度別推移と比較,③特に新潟県を含む東北各県データにより年度別推移の比較を行い,新潟市の管理の実態についてもその特徴の考察を行った.農地台帳の筆単位の農地面積等が公表されたといえ,この積み上げで市町村単位や県単位,まして全国単位での農地面積の全体把握は,現状からはまだまだ難しいと言える.実際に2014年データで,農林水産省が毎年度公表している耕作面積調査と市町村で固定資産税課税台帳の農地面積の差は45万ha以上と大きな差がある.今後,各機関で管理する情報の統一を図っていくには,地籍調査が進展しない理由として掲げられた原因を踏まえ,現場段階でのすり合わせ以外に方法がないと思われる.新たな全国農地ナビのシステムの整備等は非常に期待されているところであるが,農地の筆別管理に伴う課題等も多く,今後も引き続き,実態把握と検証が必要である.