農村経済研究
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2019年度 第55回宮城大会報告特集 津波被災地域の新たな農業の展開とその担い手
農地復旧・復興と合意形成
-宮城県における震災復興を事例として-
郷古 雅春
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2020 年 38 巻 1 号 p. 8-17

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抄録

宮城県における東日本大震災の津波被害を受けた農業復興の現状と,その過程で発生した様々な課題や対応について,主に農地・農業水利施設などの農業農村工学分野における震災復興を振り返った.復旧・復興を進める上で,まず,農地や農業水利施設など,農業インフラの復旧・復興を急がなければならない.また,復興を契機としてこれまでの農業・農村の抱える課題解決も求められた.復旧・復興を進める過程では,技術,事業制度,土地利用,合意形成等の様々な課題もあった.災害復旧現場に立ち向かった現場担当者が法律や事業制度の制約の中で,発災後に次々と生じる困難に対して臨機応変に現場的解決を与え,社会的要請にどのように答えたのか.また,担当者は当面する課題に対して,即時的に実用的な対策や工夫,気づき,教訓,知恵等を生み出し,困難な状況を乗り越える過程を繰り返しながら多様な状況にどのように対応したのか.さらに,復興交付金事業制度では,大区画圃場整備と大型農業機械の導入が同時セットで行われるなど,農業復興の上でも,また大区画化のメリットを早期に発揮する上でも注目される取組みが行われた.これらについて振り返ることは,予想されている南海トラフなどの大地震や頻発する豪雨災害等への備えとして有益である.

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© 2020 東北農業経済学会
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