農村経済研究
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2019年度 第55回宮城大会報告特集 津波被災地域の新たな農業の展開とその担い手
津波被害を受けた仙台平野の先端技術による復興支援
-乾田直播体系の技術開発・普及を中心に-
大谷 隆二
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2020 年 38 巻 1 号 p. 18-23

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抄録

東日本大震災で津波被災した仙台平野の水田農業の復興を目指し,プラウ耕鎮圧体系乾田直播を核とした水田輪作の実証試験を実施した.津波被害を受けた仙台市沿岸から南部平坦地の水田は10~30 の小区画であったため,これら圃場を合筆・均平して3.4ha と,2.2ha 圃場を造成した.この2 つの圃場を用いて,2013 年から稲-小麦-大豆2年3作の実証試験を開始した.3年間の平均収量は,水稲533kg/10a,小麦403kg/10a,大豆226kg/10a で,安定した収量が得られることを明らかにした.60kg 当たりの費用合計は,水稲6,806 円,小麦7,397 円,大豆14,664 円で,それぞれ2010 年東北平均の57%,46%,72%に低減することを実証した.さらに,合筆した大区画圃場の地力ムラに対応した可変施肥を水稲乾田直播に適用したところ,増収により60kg 当たり費用合計は3ポイント程度低減した.東日本大震災から9年が経過した現在,100ha 規模の土地利用型生産法人が隣接して立ち上がり,プラウ耕鎮圧体系乾田直播はこれらの法人で導入が進んでいる.

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© 2020 東北農業経済学会
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