2021 年 2 巻 p. 1-17
19世紀中頃に琉球王国に滞在した8人のフランス人宣教師の中で,ルイ・テオドール・フュレ神父は6年3か月の最も長い期間琉球で過ごした。本来の目的であるキリスト教の布教活動ができない状況の中,フランス人宣教師たちは後の日本上陸に向けて語学学習に励んだが,フュレ神父はそれ以外にも学術的関心を持って多岐にわたる活動を行い,その資料や記録を残している。本稿では,まずフュレ神父の気象学,地震学,民俗学等における学術的活動の記録を紹介する。次に6年以上に渡る滞在中,フュレがどのように琉球王府との良好な関係作りに腐心していたかをパリ外国宣教会に残る手紙から読み解き,その滞在における方策を明らかにする。