抄録
本研究は長崎県の島嶼地域における航路網についてネットワーク分析を行い,観光需要との関係を考察した。長崎県は多くの島嶼を抱えており,観光による地域振興が行われているが,交通の利便性が課題となっている。最初に航路の結びつきから空間構造を明らかにするため,中心性の測定を行った。島嶼地域側の中心性が高いのは五島列島の福江島,中通島,小値賀島となり,対岸の都市側では佐世保市が高い値を示した。次に中心性の値と各島の観光客数との関係を分析した結果,中程度の相関関係がみられた。これらのことから,島嶼地域の観光振興においては島内の観光資源を整備するだけではなく,島外の結びつきを考慮した取り組みの重要性が示唆された。