抄録
絶対オージェスペクトルの弾性散乱ピーク近傍(エネルギー損失量:0∼100 eV)は絶対反射電子エネルギー損失分光法(REELS: reflection electron energy loss spectroscopy)スペクトルに相当する.この絶対REELSスペクトル解析により,非弾性散乱平均自由行程(IMFP: inelastic mean free path)と表面励起パラメータ(SEP: surface excitation parameter)を絶対値で同時に決定できるREELSスペクトル解析法を提案した.提案した解析法と絶対REELSスペクトルを用いて300から3000 eVの電子に対するNiのIMFPとSEPを決定した.絶対REELSスペクトルの解析により求めたIMFPはTPP-2Mの式を用いて計算したIMFPとよい一致を示した.SEPについては,Chen型のSEPの式へフィッティングして経験式を導出した.これらの結果から,本解析法が中エネルギー電子に対するIMFPと SEPを求めるのに有効であることを確認した.