表面電子分光法における電子の非弾性平均自由行程(inelastic mean free path, IMFP)を簡便に計算するための手法として,簡易単極近似(simplified single-pole approximation,SSPA)を導入し,その有効性について解説する.SSPAは,従来のPennによる単極近似(single-Pole approximation,SPA)をさらに簡略化した手法である.数式的には分散式における 𝑞
2 の係数を1つのパラメータとして表現し,それを最適化することで,得られるIMFP値をFPA(full Penn algorithm)から得られるIMFPの値に近づけることが可能である.SSPAに基づいてエネルギー損失関数(energy loss function, ELF)から計算したIMFPは,41元素においてFPAおよびSPAによる結果と比較すると,300 eV~10 keVの範囲において良好な一致を示した.特に,分散式中の係数αを0.4167 とした最適化SSPA では,FPA との平均相対差が3% 以下であり,実用的にも十分利用可能である.また,MathematicaによるSSPA-IMFPの実装方法や分散式の係数の最適化計算の手順についても詳述し,読者が再現可能な計算環境についても解説した.
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