2015 年 21 巻 3 号 p. 112-120
C60イオン銃やArガスクラスターイオン銃の利用により,TOF-SIMS(Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)による有機材料の深さ方向分析の応用が急速に広がっている.本稿では,化学種の正確な深さ分布情報を得ることを目的として開発した,TOF-SIMSによるAr-GCIBによる切削断面観察法を紹介し,その有用性について検討した結果を報告する.本観察法は,分子構造を維持したままの断面観察が可能であり,3次元スパッタデプスプロファイルでは得られない正確なスケールの分子種の分布情報が得られることから,複雑な有機材料の構造解析に有効であることを示した.