2025 年 43 巻 p. 13-18
小規模私立大学における教学IR(Institutional Research)組織ではその人材の育成に課題を抱えているケースが多くある。その要因として小規模私立大学の教学IR組織で扱うデータセットおよび分析の特徴、そして人材育成上の課題がこれまでの先行研究において十分に明らかになっていないことが関係している。そこで本研究の目的は小規模私立大学である中京学院大学の教学IR室の事例を通して、それらの特徴を整理することで小規模私立大学の教学IRにおけるデータ活用人材の育成上の課題および、その在り方を検討していくことである。
検討の結果、データセットと分析の特徴として、データの個数が相対的に少ないため、データの収集が比較的容易であること、質的データよりも量的データを扱う頻度が高いため量的データに対する分析手法を率先して習得する必要があること、それに伴い基本統計量を可視化する作業が多いこと、の3点が明らかとなった。
また人材育成上の課題として、分析結果の解釈、分析結果の示し方ならびに共有の方法、そして分析結果の送り手側と受け手側における認知的課題に言及した。
このことから小規模私立大学の教学IRにおけるデータ活用人材の育成の要点として、教学マネジメントに携わるすべてのステークホルダーがデータセットとその特徴を理解する必要があり、知識とスキルの修得に関する優先性を十分に考慮しながら、認知的課題に対する対応力を育成することが教学IR組織において重要であると述べた。