不安症研究
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総説
わが国の全般不安症の現状と課題
大坪 天平
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2022 年 14 巻 1 号 p. 2-11

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抄録

全般不安症(GAD)はもともと残遺カテゴリーから出発し,“心配”を中心とする独立カテゴリーとして再構築された。しかし“心配”は他の精神疾患や身体疾患でもよくみられる症状であり,疾患の中心症状としての特異性がない。また,GADは他の精神疾患とのcomorbidity率が極めて高く,そのdistinct entityとしての存在に疑問を生じずにいられない。そもそも,この40年間,GADの診断基準自体が大きく揺らいでおり,DSMとICDでも大きく異なっていた。GADはうつ病の前駆症状,残遺症状,増悪因子,あるいは重症度指標にすぎないのではないかとの指摘もある。特にわが国においては,GADは積極的に付けられる診断ではない。たとえ,GADの患者だとしても,うつ病や他の不安症,あるいは身体表現性障害などの診断で,治療されているのであろう。中には,多剤併用となって場合もあるかもしれない。このような状況を脱するためには,わが国において,さらなるGADの啓発,GADの適応をもつ抗うつ薬の導入,GADの診療ガイドラインの作成が必要と考えられる。

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© 2022 日本不安症学会
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