問題を未然に防ぐための予防的介入は,目の前にある問題を解決する治療的介入と比較して,効果が見えにくいために実施が遅れることが多い。しかし,子どもたちのメンタルヘルスの悪化やコロナ禍の影響を踏まえると,学校教育現場における予防的介入の実装が求められている。本総説では学校でのメンタルヘルス予防教育の現状と課題について,こころあっぷタイム(Up2-D2: Universal Unified Prevention Program for Diverse Disorders)の社会実装を通じて解説を行った。本総説では社会実装における研究面での課題として,有効性の確立,測定指標の選定,対象者の拡大,構成要素の洗練化と短縮化,既存プログラムからの選定,若手研究者の育成,について議論した。加えて,実践面での課題として,キーパーソンの確保,授業時間の確保,実施者の養成,運営資金の調達,広報活動の実施,について議論した。