抄録
強迫症の認知行動モデルによれば,確認強迫とは三つの脅威的解釈(脅威が生じる可能性/確率を高める解釈;実際に脅威が起こった場合の恐ろしさを高める解釈;脅威が起こった場合の自己責任を高く見積もる解釈)によって維持・増悪される。これらの脅威的解釈に加え,強迫症状を増悪させている安全行動に変化を与える認知行動療法(Cognitive Behavioural Therapy; CBT)は,強迫症を改善させるのに有効とされている。当該モデルに基づき,筆者(治療者)は,確認強迫の症状を持つ患者に対してCBTを行った。当該CBTの結果,本症例のObsessive Compulsive Inventoryによって測定された強迫症状は低減され,当該介入は本症例の症状を緩和させるのに有効だったと示唆された。特に脅威的解釈への介入は,強迫症状を低減させるだけでなく,暴露反応妨害法への動機づけを高めるのにも有効であった。さらに,メタファーを用いた心理教育は,CBTの複雑な概念の学習と記憶の定着を促進させるのに有効であったと示唆された。