2007 年 2007 巻 DMSM-A702 号 p. 15-
Particle filter は,逐次データ同化のために応用されつつある手法の一つであるが,アンサンブルの縮退という問題がしばしば起こり,有効に機能しない場合がある.そこで,この問題を回避するためにmerging particle filter という手法が提案された.Merging particle filter では,フィルタ分布を表現するアンサンブルの各構成粒子を,予測分布を表現するアンサンブルから抽出した複数のサンプルの重みつき和によって生成する.重みつき和を取る際には,重みを適切に調整することで,フィルタ分布の平均と共分散の情報がアンサンブルで保持されるようにする.この重みの与え方には任意性があるのだが,本研究では,2 種類の重みの与え方を考え,それぞれについてデータ同化実験を行い,結果を比較した.その結果, Lorenz (1963) による低次元のモデルでは,重みのうちの一つを1 に近い値に取り,その他の重みを小さい値とした場合に,より精確な推定ができることがわかった.これは,非ガウス性の強いフィルタ分布を表現するためにこのような重みの取り方がより有効であることを示すものと考えられる.また,Lorenz and Emanuel (1998) による比較的次元の高いモデルの場合でも,アンサンブルを構成する粒子の数を多く取ることが可能ならば,低次元のモデルの場合と同様,重みのうちの一つを1 に近い値に取り,その他の重みを小さい値にした方がよい推定ができることがわかった.